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理念「人の命に差別があってはならない」

民医連の特徴、言い換えると他の医療団体・医療機関と何処が違うのかということを明らかにする必要があります。医療機関として経営をおこないつつ平和を守り豊かな社会をつくるという運動を推進しているところに民医連としての活動の特徴があります。

特に、今日、高齢者一部負担金の導入から社保本人の3割負担導入で患者負担が増加し受診抑制がすすんでいます。また、介護保険施設などでは法律が改悪され、食事や居住費の保険はずし等で低所得者が施設に入所できない、あるいは追い出されるという事態が生じようとしています。

また障害者福祉サービスの利用に所得保障のないまま定率(応益)負担も導入されようとしています。利用者負担増によるサービス利用の低下が懸念されています。
 さらには混合診療の導入、株式会社の医療への参入による医療の営利化の動き、風邪薬などを保険からはずす動きなどがあり、お金のあるなしで、命が危険にさらされようとしています。命は平等であるはずなのに、事実上、お金のあるなしで命が差別される事態が進行しています。私たち民医連は日本国憲法第25条にもとづく生存権の保障と政府に対して社会保障を充実させる義務を忠実に守らせること主要な課題として掲げ、奮闘するものです。

当然、国政の課題は政党や多くの医師会をはじめ他の医療団体や組合員・患者、地域住民と連帯しておこなうことなしには実現できません。政策で一致できるところで統一行動に組み、医療や介護を守り充実させるために奮闘することとします。さらに国に限らず、地方自治体にも具体的な課題で行政の改善を推進し患者・住民の負担軽減のために努力していくものです。

また、私たちは行政に要求すると同時に社会資源の活用に努め、病院では「差別のない医療」の一つとして「差額ベッド代の徴収を行なわない」などを実践しています。

基本方針1.「人権を尊重し、患者の権利を守ります」

日本国憲法は、健康であることを国民の権利としてうたい、同時にこれを保障するのが国の義務としています(憲法25条)。この点から私たちは、患者を生きる権利の主体者として人権を守る視点から捉えることが大切です。相次ぐ医療改悪や長期化する不況の影響で受診を控える傾向が強まっています。「病人が患者になれない」「安心して療養ができない」という事態は一層進行しています。お金がある人だけが病院にかかれて、お金がないひとは病院にかかれない、というのでは人権(受療権)が尊重されているとはいえません。病院にみえている患者のみならず、病院にこられない人にも目を配り、地域住民の健康や保健予防にも心を配ることが大切です。

 地域住民にこだわり、寄り添い「最後の拠り所」の事業所として現場・地域から人権を守る取り組みを強めます。

また、受療権のみならず、医療の質(標準化)と安全性が問われる時代になっています。この視点から、医療における公開と参加が求められるようになりました。

 私たちは医療における住民参加を促進する、患者の満足度をたかめる事業所づくりをめざしてきました。医療の質は最終的には患者の満足度ではからます。そこで患者の権利章典として、闘病の主体者としての5つの権利(知る権利・自己決定権・プライバシーに関する権利・学習権・受療権)とこれらを守り発展させる立場を明確にしました。

 患者中心の医療を実現する立場から、医療従事者と患者との共同の営みの視点で、患者の権利、尊厳を守る取り組みを強めます。患者の権利としては知る権利、自己決定権、プライバシー権、自己情報コントロール権、学習権、さらに安全な医療を受ける権利があります。共同組織とともに検討し、日常の医療活動のなかに定着させる取り組みを重視します。

基本方針2.「医学の成果に学び、医療と福祉の質の向上に努めます」

 私たちは、つねに学問の自由を尊重し、新しい医学の成果に学び、たゆみなく医療内容の充実と向上に努めます。地域住民の生命と健康、人権を守るという社会的使命を果たすためにも知識や技術の習得を行い医療と福祉の質の向上に努めることとします。

 医療の質には個々の診療内容にとどまらず、安全性の確保、医療技術の獲得、診療情報や快適な療養環境の提供、医療相談機能、行政や開業医などとのスムーズな連携など総合的な内容が求められています。

 とりわけ医療安全対策はもっとも強化すべき課題です。医療行為のもつ治療という積極面、と一方ではリスク、そして不確実性がともないます。これらを患者と共有するインフォームドコンセントが基本です。なによりも「患者の人権」を尊重し、ミスや事故には謙虚に向かい合い、集団で議論し、教訓を共有する姿勢が大切です。スタッフの研修や指導では到達評価と基準を明確にすること、新たな技術の導入にあたっては集団で議論すること、スタッフの学習教育が欠かせません。

 医療の質の確保は安全な医療を提供するためにも重要な課題です。医療の質を示す指標の公開は国民の要求でもあります。自己評価と相互評価、患者・利用者からの評価や第3者機関の評価(医療機能評価、ISOなど)をすすめ、医療の質の向上に意識的に取り組みます。医療の質の評価は理念やマニュアル、システムや体制など構造評価が中心になっていますが、医療や介護のプロセス、さらにアウトカム(成果)へと深化していきます。これらに対応できる仕組みづくりが求められます。

医療の質の確保としてEBMが取り入れられています。個別性のある患者により適切に医療を提供する手法として取り入れられたものあり、活用に習熟していきましょう。

 民医連の優位性である民主的集団医療の実践を点検し、改めて日常の医療活動に定着させる取り組みを重視します。職種間の垣根をなくし意思疎通を強めること、各職種間の役割・権限を明確にし専門性を発揮すること、日々の情報を医師に集中すると同時に集団で共有すること、インフォームドコンセントを実現するた、説明内容の吟味とプロセスを重視すること、治療方針や医療行為の内容について、医師から他職種への説明責任と透明性が確保されていることが大切です。回診の実施、日常的なカンファレンスの実施、充実、全職種参加症例検討会の実施、医療倫理の学習などの定着を図ります。

基本方針3.「科学性とヒューマニズムにあふれる民主的な職員集団をめざします」

 私たちは、常に新しい医学の成果に学び、たえざる技術の向上をめざして努力してきました。このような医療技術の向上はあくまで病気を予防し、治療し、社会復帰させるという目的を実現させるための手段として行わなければなりません。私たちは当然、反技術主義の立場に立つことはありません。

 ところが技術革新がすすみ、医学・医療の分化や専門化がすすむなかで、医療技術そのものを高めることが自己目的化する危険性もはらんでいます。そして「医療」は医療技術者と医療施設、医療機器を中心として行われるかのような誤った理解に陥り、医療が本来、患者との「共同の営み」であることが忘れられ、医療者側が一方的に医療内容を決定していく傾向が生まれやすくなります。

 そもそも医療は人間が本来持つ「自然治癒力」を助け、引き出しながら病気を予防・治療し、社会復帰を促し、健康な状態と取り戻すことが目的です。ですから医療技術が働きかける対象は生きた人間、患者そのものであり、患者自身が持っている回復力です。したがって医療技術には、科学性はもちろん、人間尊重、人権を尊重する高いヒューマニズムと倫理性、安全性が求められます。

 「科学性とヒューマニズム」の視点は、医療制度や福祉制度など社会的な問題に対しても向けられなければいけません。人間不在・効率一辺倒の新自由主義政策のもとで、病人、高齢者、障害者など弱者を切り捨てる社会保障改悪が進められています。弱者を切り捨ててしまう政策を、私たちは決して許してはいけません。科学性とヒューマニズムにあふれた職員集団の力の見せ所です。

科学性とヒューマニズムにあふれた職員集団を作り上げる上で、民主主義を徹底させる事はとても大切です。民主的集団医療を実践する医療チームのありようについては前項でも説明した通りですが、そのための職場作りにあたっては、職場の使命や目標を明確にし、患者様・利用者様の人権を守ることをいつも中心に据えて、決めたことはやりぬくという態度が大切です。職場内や職種間でしっかりとした信頼関係を築き、事実に対して嘘や誤魔化しのない真摯な気風を育てます。失敗に対しても責任追及に終わらず、科学性をもって原因を究明し再発予防を一丸となって追求できるヒューマニズムあふれる職員集団を目指します。

基本方針4.「平和憲法を守り、戦争に反対します」

患者・組合員、そして地域住民の「命と健康を守る」という私たちの願いに対し、最も相反するものが人の命を奪う戦争です。

アメリカが国際世論の反対をおしきって引き起こしたイラク戦争では、10万人以上の人が亡くなり、イラクの現状を泥沼化し再建を困難なものにしました。一方、日本政府はアメリカの要請にこたえ、自衛隊のイラク派遣を強行しました。

宮崎にも新田原基地や潜水艦レーダー基地(えびの市)を抱え、政府内では沖縄米軍基地移転に関連して新田原基地が空中給油機能のひとつの候補地とあげられています。

戦争に対し日本国憲法は第9条で戦争の放棄と戦力の不保持を明確にうたっています。世界でも戦後1度も外国で武力行使をしたことがない、戦争放棄をうたった憲法9条を持つ日本に信頼が寄せられています。日本国憲法9条は、世界の平和を願う人々にとっても模範となっています。

この戦後の平和的発展を着実に築いた日本国憲法の第9条を捨てさることがこれから先の日本にとって本当にプラスになるのでしょうか。私たちがやらなければならないことは9条を変えることではなく、守り生かしていくことではないでしょうか。

現在、自民党は憲法9条の解釈による外国への自衛隊の派兵は限界だとし、9条2項を改正する改憲案をもっています。そして民主党もこの9条改正に賛成する意向です。

しかし憲法改定は国会議員の3分の2が賛成したとしても、国民投票では国民の過半数の賛成がなければ憲法を変えることはできません。国民とともに平和憲法、「9条」を守り抜き、戦争をしない国の道を歩み続けることこそが求められていますし。このことは国民やアジア諸国民の願いでもあります。

私たち職員は、患者・組合員・地域の人々に対し、平和憲法を守り、戦争に反対する立場を鮮明にアピールできるよう学習し行動を起こすことが大切です。そして平和の輪を守り広げるこの取り組みこそ医療従事者として、民医連職員としての社会的使命だと考えます。

基本方針5.「これらの方針を地域の人々と協同してすすめます」

1、地域の人々と協同することの今日的重要性
 21世紀初頭、戦争や大企業のあくなき利潤追求をすすめる道か、それとも国民一人ひとりの暮らしやいのちを大切にする平和・福祉の国づくりを目指す道かをめぐって、歴史的なたたかいの時代になっています。
 とくに、ここ数年は、憲法、平和、社会保障、人権、民主主義をめぐって国民的な論議とこれまで以上の連帯と協同の取り組みが求められています。

2、地域のなかで、民医連院所・施設の存在意義を問い直しましょう
 地域の人々とは、地域の医療機関や福祉施設、さまざまな団体・個人そして患者・住民・医療生協の組合員のことをいいます。私たちの医療活動や経営活動は、特殊なものでなく、普遍性をもったものです。
 それだけにひとりよがりにおちいることなく、地域の人々と協力・協同して住民の医療要求にこたえていくことが必要です。
 これまで、宮崎の地で30年間、全国の経験に学び、培ってきた宝を地域住民のいのちと健康を守る視点で生かし活動していくことは患者・地域住民の願いでもあります。
 私たちは、地域から民医連院所・施設の期待は何かを常に問いかけ、見直す視点を大切にします。そして、地域の人々の意見をよく聞き、医療活動や経営活動の方針をつくりあげていく基本姿勢を確立してくことをめざします。

3、「安心のまちづくり」の実現に専門性をいかして参加します
 地域の医療や社会保障の要求は全階層的なものになっています。医療や介護・福祉に従事する専門家として、草の根から運動に参加していくことは存在意義にかかわる課題です。「安心して住み続けられるまちづくり」の運動は、さまざまな団体や個人によって
 多様な形態での連携と協同の輪の広がりのなかで要求実現の取り組みが行なわれています。協同という言葉には「心をあわせ、たすけあってともに仕事する」という意味があります。私たちは医療生協組合員や地域社保協と協力しながら「安心のまちづくり」の実現をめざします。                            以   上